1.座位姿勢の不調プロセス
座位姿勢の不調プロセス
これまで重要と述べてきた不調のプロセスを明確にして、必要となるアプローチについて説明します。なかなか不調が改善されない理由として、不調の悪循環について知って頂く必要があります。これから悪循環を引き起こす過程についてご説明します。
悪循環を引き起こす座位姿勢
座位姿勢での身体への影響を説明します。
身体への影響【座位】
頭部前傾:首、肩、背中
目線が下に向き、頭が下がることにより、頭を支えるために首、肩、背中の筋肉に力が入ります。頸椎はストレート、胸椎、腰椎は過後弯となります。
肩甲帯屈曲:肩、背中、胸、腕
机で作業をするために腕が前に置かれることにより、肩、背中、胸、腕の筋肉に力が入ります。肩甲骨は外側に変位します。
股関節屈曲:腰、脚、背中、腹
股関節が屈曲した状態が維持されることにより、脚、腰、腹の筋肉は収縮します。胸椎、腰椎は過後弯を強めます。
膝屈曲:脚、腰
膝関節が屈曲した状態が維持されることにより、太ももの筋肉が収縮します。
このように座位姿勢により全身の筋群に力が入り続け、筋肉が収縮した結果、立位では次のような事がおこります。
身体への影響【立位】
脊椎が生理的弯曲を保ち、筋肉、関節の柔軟性が維持されていれば、無理なくこの姿勢を維持することができます。この姿勢では、立位で身体に係る重力を、骨格の構造で支えることができるので、無駄な力を使わず過ごすことができます。
しかし、座位姿勢で猫背の状態となった身体は、常に力が入り続け、収縮した筋肉により、本来の姿勢を維持できなくなります。仮に、もし本来の姿勢を維持しようとすれば、更に筋肉に力が入ることで、疲労してしまい、また元の猫背の姿勢に戻ってしまいます。
さらに、猫背の姿勢のバランスを取るために、膝が伸ばせなくなり、股関節と膝が屈曲した状態となります。ここでも膝を伸ばそうとすれば、大腿部や腰には力が入り続けてしまうため、疲労してしまい、膝が伸ばせなくなり、立って歩行することにより不調が上乗せされていきます。健康のために運動を始めたけど続かなくなるのはこのためです。
身体への影響【睡眠】
身体を休めるはずの睡眠時においても、身体を伸ばせないため、仰向けに寝ることができない状態となってしまいます。
これまでに示した不正な姿勢は、首、腕、肩、背骨、股関節、膝関節の各部位は個別に歪んでいるのではなく、
各部位の筋群が連動して身体を歪ませているのです。
このようなプロセスで、長時間の座位姿勢の影響が、立位や歩行に拡大し、あらゆる姿勢、動作で悪循環が強化され、老化を早める結果となります。
これまでご説明した長時間の座位姿勢により引き起こされる悪循環による影響をまとめると以下の様になります。
長時間の座位姿勢による影響
人の身体・・・同じ姿勢を維持すると
→姿勢を支える筋肉が硬くなる
→関節の動きが硬くなる
→硬くなった筋群、関節を動かす際に余計な筋力を要する
→疲れが溜まりやすくなる
このプロセスが繰り返される悪循環により不調が増大します。つまり、どんなに正しい姿勢にサポートしようとも、同じ姿勢を維持することはできないということになります。
これまで、座位姿勢により引き起こされる不調のプロセスについてご説明してきました。これらの過程で引き起こされた不調や、悪循環により回復できず、不調が増大してしまう状況が、なぜ解決されないのでしょうか。次にその理由についてご説明します。